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2009年6月 - EUの欧州議会選挙(2)

さて、投票日である2009年6月7日がやってきた。


票を投じるイサベラ(左)と環境党の党首二人(右の女性は本書に登場するマリア・ヴェッテルシュトランド)


実は、投票日に先駆けて行われた世論調査では、環境党の大躍進が予想されていた。投票所が閉まり、開票が始まるのは午後9時。しかし、既に午後8時から公共テレビや民放局では、選挙特番が放送され、出口調査による予想が公表されていた。環境党は、この出口調査でも大幅に支持を伸ばしていたのだった!


選挙特番のスタジオの脇にある待合室で出口調査結果を見ている、各党の候補者たち。イサベラはいないが、右端で大喜びしているのは環境党の現職カール・シュリューテル。


開票作業がそれぞれの開票所で午後9時から始まり、得票数の集計が次々と更新されていったが、結果は予想通り、環境党の大躍進だった。得票率は11.02%と、前回の選挙での5.96%を大きく上回った。さて、気になる獲得議席数だが・・・。環境党が獲得したのは2議席だった。そして、イザベラも見事当選することができたのだった。(実は、もう1議席獲得まであとわずかだった)

イザベラは、環境党の仲間とともにストックホルム中心街に大きな会場を用意して、開票速報を見守っていた。しかし、「得票率が大きく伸びた」という出口調査の結果が明らかになったため、開票作業が始まる以前から、会場は熱気に包まれていた。そして、議席数が2議席と確定したとき、カール・シュリューテルとイサベラ・ロヴィーンは、党の仲間や支持者に感謝の言葉を述べた。

「『沈黙の海』を読んでくださった皆さん、ありがとう」
イサベラはこう言った。


左から、党首の一人であるマリア・ヴェッテルシュトランド、カールシュリューテル、イサベラ・ロヴィーン


環境党がこの選挙で大きく支持を伸ばした背景は、一つには、環境問題への関心の高まりがあった。特に、温暖化問題へ大きな懸念を抱く人が多く、一国ごとの取り組みだけではなく、ヨーロッパレベルで抜本的な取り組みが必要だ、と考える人たちが環境党へ票を投じたのであった。

環境党が支持を伸ばしたのは、主に都市部だった。スウェーデン全体で見た環境党の得票率、11.02%に対し、ストックホルム市における得票率は16.79%だったし、第二の都市であるヨーテボリ市では15.35%だった。都市部での支持率が高かったのは、高学歴の人の割合が多く、環境に対する関心が比較的高いことなどとも関係していると考えられる。

また、投票所に足を運んだ18歳から29歳までの若者に出口調査をしたところ、3~4割が環境党を支持したという。次世代を担う彼らが、環境問題へ高い関心を示していることもこのことから分かる。

(ただし、欧州議会選挙における投票率そのものは45.53%と低かった。スウェーデンは国政選挙では81.99%と先進国の間でもかなり高い投票率を誇っているが、EUの選挙となるとここまで落ちる。これは、スウェーデンの人々にとって、EUという組織が日常生活から遠い存在であることを表している。EUに対する関心は、少しずつ高まりつつあるものの、一般的に低い。)

by silent-ocean | 2010-01-28 08:36

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