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7月3日イベント 市民向けシンポジウム @ 慶應義塾大学 三田キャンパス

立て続けにイベント告知です。参加者はイサベラ・ロヴィーン氏に加えて、大学の専門家、NGOの方、漁協の方、ジャーナリストの方など、非常に多彩な顔ぶれですので、興味深い議論になることを期待しています。参加費は無料ですが、この記事の最後のほうに協賛のお願いを載せています。今回の企画は、非常に厳しい予算の中で、様々な方の協力に支えられながら行っておりますので、協賛のほうも是非ともよろしくお願い致します。

COP10 100日前緊急イベント 海の生物多様性を考える
スウェーデン環境党・欧州議会議員 / 『沈黙の海』著者
イサベラ・ロヴィーンさん来日シンポジウム


魚が食べられなくなる?
〜漁業と流通、消費を問い直す〜

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■ 日時: 2010年7月3日(土) 13:00〜17:30(会場12:30)
■ 会場: 慶應義塾大学 三田キャンパス 南館地下4階ディスタンスラーニングルーム
■ 参加費: 無料
■ お申込み方法
6月29日までに(1)お名前、(2)ご所属、(3)ご連絡先(メールアドレスあるいは電話番号)を明記の上 sakana0703@gmail.com までお申し込みください。

■ 共催: EU Studies Institute in Tokyo (EUSI)、持続可能なスウェーデン協会、グリーンピース・ジャパン、アジア太平洋資料センター(PARC)
■ 協賛: パタゴニア日本支社

■ プログラム(予定)
12:30 開場
13:00 あいさつ 田中俊郎氏(慶應義塾大学教員/EUSI所長)
13:05 イサベラ・ロヴィーン氏講演(逐次通訳)
     「水産資源は急速に枯渇している〜EUの事例から」
14:05 勝川俊雄氏(三重大学)講演
     「日本の漁業管理の現状と課題」
14:20 アジア太平洋資料センター制作DVD上映
     「食べるためのマグロ、売るためのマグロ」
14:55 花岡和佳男氏(グリーンピース・ジャパン)講演
     「水産物流通の現状と問題点」
15:25 アジア太平洋資料センター制作DVD上映
     「食卓と海 水産資源を活かし、守る」
16:00 大野一敏氏(船橋市漁業協同組合)講演
     「漁業から見る海洋環境保全の必要性」
16:15 パネルディスカッション
     「いかに管理し、いかに食べるか」 モデレーター:井田徹治氏(共同通信社)

「いかに管理し」では、EU、日本、国際的な水産資源管理の現状と課題、海洋環境保全の必要性、海洋保護区などについて、「いかに食べるか」では、消費者に対してどう魚を食べるのかということ(日本の水産物輸入によってどんな影響が起きているのか、翻って地場の漁業者が獲った魚の市場が奪われてしまっているのではないかなど)を議論します。

17:15 あいさつ
17:20 終了予定

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魚や貝、海藻など、海からもたらされる恵みは、古くから私たちの食卓を支えてきました。しかし、こうした水産資源が枯渇しつつあることが世界中で懸念されています。本来、これらの資源は自然の営みの中で子孫を残し、再生産し続けます。しかし、その力を超えるほどの量が獲られ続けてきました。同様に魚や貝が生育できる環境も失われています。

国連食糧農業機関は、世界の水産資源の4分の3が限界まで獲られてしまっていると警告、2015年に不足する魚介類の量は世界でおよそ1,100万トンと予想しています。これは、日本で1年間に消費する魚介類とほぼ同量です。

実際にこれだけの魚介類が不足すれば、価格の高騰は避けられません。タンパク質を魚介類に依存する世界の貧困層への影響は深刻ですし、日本の食卓にとっても人ごとではありません。
 
2010年10月、名古屋でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開催されます。私たちの暮らしを支える豊かな生態系を保全し、将来にわたって利用し続けていくために、締結国が話し合います。
 
その100日前にあたる7月3日(土)に、スウェーデンから、ヨーロッパの資源枯渇を告発したジャーナリストであり、現在は欧州議会議員として水産行政の改革に関わっているイサベラ・ロヴィーンさんをお迎えし、「魚を食べ続けていくために」という視点から海の生物多様性を考えるシンポジウムを企画しました。

クロマグロの禁輸が話題になり、水産資源の枯渇が懸念されていることは身近な話題になりつつあります。しかし、どのような生産・流通・消費構造の中でそうした状況が起こっているのかということはあまり知られていません。

本シンポジウムでは、この点にもスポットをあて、私たちの画一的な消費のあり方自体が、乱獲や環境に負荷をかけるような養殖に結びついていることを明らかにしていきます。
また、持続可能な漁業を行なう事例も紹介しながら、そうした漁業を支える「持続可能な水産物消費」についても考えます。

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■ スピーカー、モデレーター紹介
Isabella Lövin (イサベラ・ロヴィーン)
 スウェーデン環境党・欧州議会議員

1963年生まれ、ストックホルム在住。消費者・食・環境の問題を専門に扱うジャーナリストとして活躍。2007年夏にスウェーデンにて出版した『沈黙の海 − 最後の食用魚を追い求めて』では、乱獲によってスウェーデン近海やヨーロッパ・世界における水産資源が枯渇に瀕していることに警鐘をならし、人々の関心を大きく高めることとなった。2007年ジャーナリスト大賞、2007年環境ジャーナリスト賞を受賞。2009年6月の欧州議会選挙に環境党から立候補し当選。


勝川俊雄 (かつかわ・としお)
 三重大学生物資源学部准教授

1972年、東京生まれ。東京大学農学生命科学研究科にて博士号取得した後、東京大学海洋研究所助教を経て、現職。研究テーマは、水産資源を持続的に利用するための資源管理戦略の研究、希少生物保全のための持続性の評価など多岐にわたる。現在は、ノルウェー、ニュージーランド、オーストラリア、米国などの漁業の現場を周り、世界各国の資源管理制度の比較研究に力を入れている。業界紙、ブログなど様々なメディアで、日本の漁業改革の議論をリードしてきた。日本水産学会論文賞、日本水産学会奨励賞を受賞。


花岡和佳男(はなおか・わかお)
 国際環境NGO グリーンピース・ジャパン 海洋生態系問題担当

2000年から2002年までアメリカ・フロリダでマナティーやウミガメの保護活動に参加し、その後マレーシアにてマングローブを伐採しないエビの養殖施設の立ち上げに貢献。2007年よりグリーンピース・ジャパンに所属し、沖縄ジュゴン、違法漁業、捕鯨、過剰漁業といった海の生物多様性を守るキャンペーンを展開している。2008年の国際捕鯨委員会(IWC)では、約30年ぶりに会場内でのNGOに発言権が与えられ、30を超えるNGOの代表としてスピーチを行い、各国政府に実質商業捕鯨の中止を訴えた。国内では現在、太平洋クロマグロの過剰漁業を問題視し、漁港や市場などを巡り調査を行ったり、過剰漁業や漁業管理についてのシンポジウムを開催するなどして、海洋保護区の設立に向けた活動に注力している。


大野一敏(おおの・かずとし)
 船橋市漁業協同組合代表理事組合長

江戸時代から続く網元の家に生まれ、60年にわたり東京湾で漁業を営む。経済成長の中で海の環境が変化することに危機感を覚え、サンフランシスコ湾保全運動などを研究。湾はかけがえのない天然資源であるという信念のもと、埋め立て反対運動などを通し、東京湾最奧に残された干潟、三番瀬の保全に関わる。著書に『東京湾で魚を追う』。


井田徹治(いだ・てつじ)
 共同通信科学部編集委員

1959年12月東京生まれ。1983年、東京大学文学部卒、共同通信社に入社。1991年、本社科学部記者。2001年から2004年まで、ワシントン支局特派員(科学担当)。現在、同社編集委員。環境と開発の問題を長く取材、気候変動に関する政府間パネル総会、気候変動枠組み条約締約国会議、ワシントン条約締約国会議、環境・開発サミット(ヨハネスブルグ)、国際捕鯨委員会総会など多くの国際会議も取材している。著書に「サバがトロより高くなる日 危機に立つ世界の漁業資源」(講談社現代新書)、「ウナギ 地球環境を語る魚」(岩波新書)、「生物多様性とは何か」(岩波新書)など。


■ 上映作品紹介
「食べるためのマグロ、売るためのマグロ」2008年 31分
http://parc-jp.org/video/sakuhin/maguro.html
マグロを切り口に、グローバルなフードビジネスが私たちの食卓や環境に与えている影響を探り、「マグロが食べられなくなる」ような状況が生み出された背景に迫る。

「食卓と海 水産資源を活かし、守る」2009年 34分
http://parc-jp.org/video/sakuhin/sakana.html
マグロだけでなく水産資源全体の枯渇が世界的に懸念される中、資源を利用しながら保全するコミュニティの実践を追う。「持続可能」な漁業のあり方を考えると同時に、海の恵みを長く楽しむための「食べ方」を考える。

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■ 協賛のお願い
このシンポジウムは、ご協賛いただける方/団体を募っています。
ご協賛くださる方は sakana0703@gmail.comまでご一報の上、下記口座へ協賛金をお振込みください。

【団体】 協賛金 1口 10000 円(1口以上何口でも可)
【個人】 協賛金 1口 2000 円(1口以上何口でも可)

【お振り込み先】
お振込先口座:三井住友銀行神田支店 普通預金 7962767
口座名義:特定非営利活動法人アジア太平洋資料センター

*お振り込みの際は、お名前の前に0703をつけてください。

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by silent-ocean | 2010-06-21 20:21

7月1日イベント 「持続可能な水産行政に向けて」 @ スウェーデン大使館

スウェーデン・EU・日本
持続可能な水産行政に向けて


『沈黙の海』著者 イサベラ・ロヴィーン欧州議会議員を迎え

2010年10月、名古屋で開催されるCOP10(生物多様性国連会議)を視野に入れながら
恵み豊な海をよりよく管理する国際協力の可能性を探る


EUが共通漁業政策のもとで管理している海域は、いまやバルト海から黒海、地中海、北海、大西洋におよび、EU加盟国の陸地の合計よりも広い。しかし2002年、EUは自分たちが行ってきた政策を振り返り、水産資源の持続可能性を考慮しないずさんな行政によってヨーロッパの海の各地で乱獲が行われてきたことを報告書の中で指摘した。それ以降、徐々にではあるが、水産資源のよりよい管理と活用のための取り組みが試みられている。

10月に名古屋で開かれる生物多様性に関する国連会議COP10では、海洋環境も重要なテーマである。そして、多様性の維持は、多種多様な魚を季節に合わせて食べてきた日本の食文化の発展と漁業の活性化とも合致する。EUと日本はこれまでの経験の中から何をお互いに学びあうことができるだろうか?今後も魚食文化を大切にし、安心して魚を食べ続けるという共通の目標のもとで、あるべき漁業政策について論じてみたい。

会場 :スウェーデン大使館オーディトリアム http://www.sweden.or.jp/
 地下鉄南北線六本木一丁目駅、日比谷線神谷町駅歩いて10分
日時 :2010年7月1日(木) 14:00-17:30 (開場:13:30)
主催 :持続可能なスウェーデン協会(Sustainable Sweden Association)
協力 :水産庁、スウェーデン大使館、EU代表部、財団法人ハイライフ研究所
参加費:無料
申込み:6月25日までに、お名前、所属、当日の連絡メールアドレスあるいは電話番号を明記の上 VZQ11450@nifty.ne.jpにご連絡ください。


プログラム

開会挨拶 14:00
 ヘイス・ベレンツ(Gijs Berends )駐日欧州委員会代表部通商部一等書記官

【講演】 14:10-15:10 
 イサベラ・ロヴィーン(Isabella Lövin)、「沈黙の海 — 最後の食用魚を求めて」著者
 欧州議会議員(スウェーデン環境党)
 「生態系の視点から見たEUとスウェーデンの漁業政策、現状と最近の動き」
 逐次通訳:佐藤吉宗(よしひろ)、「沈黙の海」訳者(英語/日本語)

【講演】 15:10-15:35
 大橋貴則(おおはし たかのり)、水産庁漁政部企画課
 「日本の漁業や資源、海洋環境の現状と政府の対応策について」

休憩・名刺交換の機会 15:30-15:50  

【対談・質疑】
 テーマ:「持続可能な社会に向けて」
 対談者:イサベラ・ロヴィーン、大橋貴則
モデレーター:佐藤吉宗

終了 17:30
  
司会:佐々木晃子

講演者のプロフィールなど詳しい情報はこのPDF文書をクリック

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by silent-ocean | 2010-06-15 07:42

イサベラ・ロヴィーン氏の来日イベント告知

ここ2ヶ月ほどのあいだ帰宅後から夜遅くまで、共同企画者たちと計画を練ってきましたが、企画の概要がだいたい固まってきました。

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『沈黙の海』著者 イサベラ・ロヴィーン(Isabella Lövin)氏の来日イベント
2010年6月27日より7月4日まで日本滞在


来日企画全体の主催者:持続可能なスウェーデン協会


イサベラ・ロヴィーン(Isabella Lövin)
『沈黙の海―最後の食用魚を求めて』著者
EU・欧州議会議員(スウェーデン環境党所属)


「私たちが日頃好んで食べているタラはいつまで食べられるか?」スウェーデン人の女性ジャーナリスト、イサベラ・ロヴィーン氏は、3年がかりの調査の末に2007年夏に出版したドキュメンタリー本『沈黙の海』の中でこう問いかけた。人々が普段目にすることのない海の下で、乱獲のために水産資源が大きく枯渇しているという情報は、スウェーデンの人々の関心を釘付けにし、その年のベストセラーの一つとなった。

スウェーデンでは昔からタラが大衆魚として食べられてきたが、現在の漁獲量は最盛期の2割を下回っている。近海に生息するタラの総量が大きく減少したためである。また、スウェーデンに漂流してくるヨーロッパウナギの数は主に養殖を目的とした乱獲のために過去数十年で激減し、このままでは近い将来絶滅する恐れすらある。

国際海洋探査委員会(ICES)は、ヨーロッパ近海に生息する魚種の8割が乱獲にさらされていると警告を発している。EUは研究者の声を無視した過大な漁獲枠を長年にわたって設定してきたが、2002年に発行した報告書の中で、水産資源の持続可能性を考慮しないずさんな行政が行われてきたことを自ら認めた。世界の海でも、乱獲による水産資源の枯渇が危惧されている。

では、水産業界がすべて悪いのかというとそうではなく、資源の持続可能性を考慮しながら、消費者に安心して食べられる魚を提供している沿岸漁業の漁師たちもいる。一方で、近代的な技術を駆使して、魚の群れを丸ごと獲ってしまうような産業的漁業を行っている沖合・遠洋漁業の漁師たちもいる。彼らのなかには、ヨーロッパで魚が獲れなくなったためにアフリカ沖合いにはるばる出かけてまでも漁を続ける者もいる。そして、沿岸漁民の生活の糧を奪い、途上国での貧困を助長している。また、世界的に漁獲が減るなか養殖が今後の漁業を支えるという見方もあるものの、餌や稚魚を自然界に頼っている場合が多く、養殖に多大な期待をかけることは危険である。これらのことが、本書の中で明らかにされている。

問題は、漁業と水産資源、そして海洋生態系を私たちがいかに管理するか、ということである。著者イサベラ・ロヴィーン氏は著書の中で指摘したEU行政の改革に自ら携わりたいと考え、2009年6月に行われたEUの欧州議会の選挙にスウェーデン環境党から立候補し見事当選を果たした。彼女は現在、欧州議会の漁業委員会の一員として、2012年に正式決定されるEUの漁業政策改革に向けた議論を行っている。

『沈黙の海』の邦訳版2009年11月に日本で発売された。今年10月には名古屋で国連生物多様性条約の締約国会議(COP10)が開催されるが、それに先駆けて「持続可能なスウェーデン協会」は、著者イサベラ・ロヴィーン氏を6月28日から7月4日の間、日本に招待する。この期間中、ロヴィーン氏は日本の水産研究者や水産庁、環境省、NGOなどと情報交換の場を持ち、幅広い様々な意見に触れる予定である。一般市民向けのシンポジウムも企画している。

魚というと、食料源や経済資源と捉えられることはあっても、海の生態系を織りなす重要な構成要素と見なすことは普段あまりない。海洋生態系や水産資源の持続的な管理と、今後も安心して魚を食べ続けたいという目標は、日本もヨーロッパも共通である。その目標に向けて、ではCOP10において海洋環境の重要性をどう訴えていくかを考える場にしたい。


<日本滞在中の主な予定>
6月27日(日) 日本到着
  28日(月) 視察など
  29日(火) 東京大学にて日本の研究者の方々との会合
  30日(水)

7月 1日(木) スウェーデン大使館にて水産庁とのシンポジウム
テーマ「スウェーデン・EU・日本 ― 持続可能な水産行政に向けて」

   2日(金)

   3日(土) 市民向けシンポジウム(東京都内)
テーマ「魚を食べ続けるために ― 持続可能な水産物生産・流通・消費と生物多様性を考える」

   4日(日)日本出発

一般公開となるイベントは7月1日のスウェーデン大使館でのシンポジウムと、7月3日の市民向けシンポジウムです。詳細な案内はもうすぐ完成しますので、ここで紹介します。水産資源の持続可能性や水産行政について関心がある方は、時間を空けておいてくださいね。私も通訳や司会、モデレーターとして、全日程に参加します。

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by silent-ocean | 2010-06-11 23:25

スウェーデン初の海中国立公園

スウェーデンで第29番目となる国立公園が、2009年9月に制定された。この国で一番最初の国立公園が制定されてから100年目という、節目の年に設置されたこの国立公園は、それまでの国立公園とは少し違う。なぜかというと、その大部分が海中に位置しているからだ。

この「コステル海国立公園(Kosterhavets Nationalpark)」は、スウェーデン西海岸あるコステル諸島の周りのコステル海に位置し、ノルウェー国境と接している。下の地図に引かれた黒線がスウェーデンとノルウェーの国境だが、その線がそのまま海に伸びて、両国の領海を隔てている。その南北にそれぞれ赤線で囲まれた国立公園があるのが分かるだろう。このノルウェー側とスウェーデン側の海域が、今回それぞれ同時に国立公園に指定されたのだ。

スウェーデン側のコステル海国立公園フィヨルドの一つで、一番深いところは水深200メートルくらいだ。スウェーデン西海岸の他の海域に比べて水温が低く、塩分濃度が高い。そのため、海洋生物の多様性が大きいサンゴ礁や腕足動物をはじめ、6000種類の生物がこの海域で確認されている。そして、この生物多様性を今後も維持して後世の世代へと受け継いで行くために、スウェーデン議会は2008年に国立公園に指定することを決定したのである。


しかし、一つの問題が指摘されている。国立公園に指定はされたものの、底曳きトロール漁の禁止は行われないことである。底曳きトロール漁は、通常カレイやタラなどの底魚を漁獲するために用いられる漁法であり、この海域ではこの漁法によって特にエビ漁が営まれている。ただし、底曳きトロール漁は海底を引っ掻き回し、そこにある生態系を破壊してしまう

この海域には、かつては今以上に多くのサンゴ礁が存在していたが、1970年までに大部分が死滅してしまった。盛んに行われた底曳きトロール漁が原因だと、海洋生物学の専門家は見ている。今回の国立公園指定は、まさに僅かに残された生態系を守ることを目的としていたのだった。現在、サンゴ礁が存在するのはコステル海のごく限られた部分だが、そこでは確かに底曳きトロール漁が禁止されることにはなった。しかし、保護することが求められているのはサンゴ礁の他にも様々な底生動植物があるにもかかわらず、底曳きトロール漁が禁止されるのはコステル海国立公園のわずか2%にすぎない。一方、同時期に国立公園に指定されることになったノルウェー側の海域では、その10%で底曳きトロール漁が禁止されることになった。

このように、底曳きトロール漁が今後も海域の大部分で続けられることに対しては懸念が多いが、国立公園に囲まれたコステル諸島には約320人の住民が暮らし、主に漁業(エビ漁)や遊漁、観光業で生計を立てているため、国立公園指定に向けた協議の中で底曳きトロール漁の禁止を盛り込むことは難しかったようだ。(ちなみに、夏の間はリゾート客のために島に居住・滞在する人の数は8000人に膨れ上がる)

他方、漁師の側は環境への負荷を少しでも減らす工夫をしている。例えば、底曳きトロール漁によるエビ漁では、タラやカレイなどの混獲が懸念されたが、現在は網の入り口に格子をつけることで魚が網に入るのを防ぐことが義務付けられている。そのような工夫によって、漁師の中にはマリン・エコラベルなどの認証を取得しているものもいる。では、底曳きトロール漁以外にエビを獲る方法はないかというと、現在は籠による漁法の研究が続けられているがまだ実際にはほとんど用いられていない。



このような問題があるものの、残された貴重な生態系が国立公園の指定によって保護され、回復していくならば、今後はエコツーリズムが盛んになり、また、魚の産卵場所が拡大していけば漁業にも良い効果をもたらすことが期待される。一方、底曳きトロール漁をどの海域で許可するかについては、今後も議論が続けられていくだろう。

<出典>
2009年9月6日付 日刊紙Dagens Nyheterの科学面に掲載された記事を元に作成

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by silent-ocean | 2010-06-08 23:25

2009年7月-選挙後初の欧州議会開催

6月はじめに行われた欧州議会選挙で無事に当選を果たしたイサベラ・ロヴィーン。彼女を含め、EU27加盟国から選出された総勢736人の議員は早くも7月に、ベルギーの首都ブリュッセルに置かれた欧州議会に終結し、選挙後初めての会合を持った。ここでは、委員会メンバーの決定が行われた。

日本の国会と同様、細かい政策議論を行うために、議員は各委員会に配分される。欧州議会には20ほどの委員会が存在する。

イサベラの希望は、もちろん漁業委員会に所属すること。それに加え、途上国への国際援助を議論する開発委員会にも興味を示していた。欧州委員会での議論の結果、イサベラは希望通り、漁業委員会と開発委員会の正規メンバーとなった。

では、漁業委員会の議長ポストには誰が選出されたのかというと、カルメン・フラガ議員。どこかで聞いた覚えのある名前だって? そう『沈黙の海』の第8章に登場するスペイン選出の女性議員だ。スペインの漁業関係者を代弁している彼女は、水産資源の保全や漁業の抑制にことごとく反対していた。その彼女が漁業委員会の議長になったのだ。しかし、これは何も初めてのことではなく、1997年から1999年にかけても議長ポストに就いていた。

余談だが、この漁業委員会には、ある有名人物もメンバーとなった。それは、フランス選出ジャン=マリー・ル・ペン議員。彼は、極右政党であるフランス国民戦線の党首として知られるが、欧州議会議員でもあったのだ。

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by silent-ocean | 2010-02-21 06:21

2009年6月 - EUの欧州議会選挙(2)

さて、投票日である2009年6月7日がやってきた。


票を投じるイサベラ(左)と環境党の党首二人(右の女性は本書に登場するマリア・ヴェッテルシュトランド)


実は、投票日に先駆けて行われた世論調査では、環境党の大躍進が予想されていた。投票所が閉まり、開票が始まるのは午後9時。しかし、既に午後8時から公共テレビや民放局では、選挙特番が放送され、出口調査による予想が公表されていた。環境党は、この出口調査でも大幅に支持を伸ばしていたのだった!


選挙特番のスタジオの脇にある待合室で出口調査結果を見ている、各党の候補者たち。イサベラはいないが、右端で大喜びしているのは環境党の現職カール・シュリューテル。


開票作業がそれぞれの開票所で午後9時から始まり、得票数の集計が次々と更新されていったが、結果は予想通り、環境党の大躍進だった。得票率は11.02%と、前回の選挙での5.96%を大きく上回った。さて、気になる獲得議席数だが・・・。環境党が獲得したのは2議席だった。そして、イザベラも見事当選することができたのだった。(実は、もう1議席獲得まであとわずかだった)

イザベラは、環境党の仲間とともにストックホルム中心街に大きな会場を用意して、開票速報を見守っていた。しかし、「得票率が大きく伸びた」という出口調査の結果が明らかになったため、開票作業が始まる以前から、会場は熱気に包まれていた。そして、議席数が2議席と確定したとき、カール・シュリューテルとイサベラ・ロヴィーンは、党の仲間や支持者に感謝の言葉を述べた。

「『沈黙の海』を読んでくださった皆さん、ありがとう」
イサベラはこう言った。


左から、党首の一人であるマリア・ヴェッテルシュトランド、カールシュリューテル、イサベラ・ロヴィーン


環境党がこの選挙で大きく支持を伸ばした背景は、一つには、環境問題への関心の高まりがあった。特に、温暖化問題へ大きな懸念を抱く人が多く、一国ごとの取り組みだけではなく、ヨーロッパレベルで抜本的な取り組みが必要だ、と考える人たちが環境党へ票を投じたのであった。

環境党が支持を伸ばしたのは、主に都市部だった。スウェーデン全体で見た環境党の得票率、11.02%に対し、ストックホルム市における得票率は16.79%だったし、第二の都市であるヨーテボリ市では15.35%だった。都市部での支持率が高かったのは、高学歴の人の割合が多く、環境に対する関心が比較的高いことなどとも関係していると考えられる。

また、投票所に足を運んだ18歳から29歳までの若者に出口調査をしたところ、3~4割が環境党を支持したという。次世代を担う彼らが、環境問題へ高い関心を示していることもこのことから分かる。

(ただし、欧州議会選挙における投票率そのものは45.53%と低かった。スウェーデンは国政選挙では81.99%と先進国の間でもかなり高い投票率を誇っているが、EUの選挙となるとここまで落ちる。これは、スウェーデンの人々にとって、EUという組織が日常生活から遠い存在であることを表している。EUに対する関心は、少しずつ高まりつつあるものの、一般的に低い。)

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by silent-ocean | 2010-01-28 08:36

2009年6月 - EUの欧州議会選挙(1)

EUの欧州議会選挙は2009年6月初めに、EUに加盟する27カ国のそれぞれで行われた。

全議席数736のうち、スウェーデンに充てられたのは18議席。この18議席を巡って、スウェーデンでは国政・地方選挙と同様に比例代表方式による選挙が行われた。

前回の記事の通り、イサベラ・ロヴィーン環境党から出馬の話を持ちかけられ、2008年末にこの申し出を受けることにした。その後、党内での事前投票によって候補者名簿の第2位に名前が載ることが決まった。つまり、環境党が少なくとも2議席を獲得すれば、彼女にも当選のチャンスが回ってくるということだった。

欧州議会の選挙は5年ごとに行われるが、その前の選挙で環境党が獲得したのは1議席、得票率は5.96%だった。さて、2議席を獲得することは可能なのだろうか・・・?


キャンペーンポスターより。真ん中の男性が候補者名簿第1位のカール・シュリューテル(現職)。そして左にイサベラ・ロヴィーン、右に第3位のボディール・ケバロス。



選挙キャンペーン中の写真をいくつか。


環境党はストックホルム中央駅の構内に特設スタジオを設けて、選挙日前日までキャンペーンを展開した。多くの人々が行き交う場所とあって効果は抜群。



イザベラもここで自分の考えや意欲を何度か訴えた。



地方へも赴く。この日はヨーテボリをはじめとする西海岸の町を回った。キャンペーン中も意見交換や情報収集は欠かせない。ヨーテボリの郊外の漁港フィスケベックでは、エコラベル認証を取得したニシン漁を行っている漁師と意見交換。現行制度の問題点などを聞いた。(訳者も同行)



同じく西海岸に位置するリューセシールでは、大きな水族館を訪ね、環境党が掲げている海洋環境保護プログラムについて、ここで勤務する海洋生物専門家から意見や指摘を聞いた。(訳者も同行)



地方を訪ねると、地元の新聞やテレビ・ラジオ局が取材のために殺到する。『沈黙の海』のおかげで既に名前が知れていたため、キャンペーン中はメディアの注目を集めやすかった。


さて、ついにやってきた投票日。結果は?(続く・・・)

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by silent-ocean | 2010-01-22 06:32

イサベラ・ロヴィーンの決意

『沈黙の海』を2007年8月に出版したイサベラ・ロヴィーン(Isabella Lövin)は、スウェーデン国内の各種メディアの注目を浴び、本が高く評価された結果、10を超える数の賞を受賞することとなった。そのうち、代表的なものが「スウェーデン・ジャーナリスト大賞」であり「環境ジャーナリスト賞」だった。

その後も、彼女はジャーナリストとしての活動や執筆を続けていたのだが、2008年の11月、大きな決断をすることになった。その翌年6月に開催される欧州議会選挙に立候補することを決めたのだった。


ジャーナリストから政治家への転身という思い切った決断を行ったわけだが、彼女はその心境をジャーナリスト新聞(Journalisten)で語っている。ジャーナリスト新聞は、スウェーデンのジャーナリスト協会が会員向けに発行している機関紙だが、彼女はそれまで定期的にコラムを連載していた。その連載の最後となるコラム(2008年11月24日付)に心のうちを語っていた。

ちなみにこのジャーナリスト協会は、ジャーナリストを代表する団体であると同時に、ジャーナリストのための労働組合でもある。

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2008年11月24日
さようなら、ジャーナリスト新聞!
もとの文章はこちら](和文の強調および脚注は訳者が加えたもの)


「ジャーナリストから政治家に転身するのは難しい決断だった?」

環境党(緑の党)の欧州議会選挙の立候補者リストに私の名前があることについて、日刊紙ダーゲンス・ニューヘーテルからこんな質問を受けた。私は「難しくはなかったと思う」と答えた。

しかし、実際はというと、私の人生のなかで最も厳しい決断の一つだった。いや、離婚や解雇だったらもっと大変だろうから、最も厳しいというのは言いすぎだけれど、それでもジャーナリストとしてのタブーを犯してしまうような感じがした。自分の意見を主張するだけならまだしも、政治家になることを選んでしまったのだから。

政治家への転身を決断した瞬間、ある考えが頭をよぎった。「私がこの新聞に連載してきたコラムは続けられるのだろうか?」私はもうジャーナリストでなくなるわけだし、ジャーナリストとしての最も重要な原則、つまり「中立性」を放棄してしまったわけだから、難しいかもしれない。さあ困った。でも、よく考えてみれば、あの本を出版してからというもの、私はジャーナリストの同僚からもはやジャーナリスト扱いされなくなり、むしろ専門家だとか評論家だとかオピニオンリーダーと見なされるようになったのも確かだ。

ジャーナリズムを通じて私が環境問題への関心を示してきたおかげで、ついに思いがけない申し出を受けることになった。それは私の人生を根本から変えてしまう申し出だった。

「欧州議会の議員になってみないか?」

しかも、EUのあの悲惨な漁業政策が改革されようとする、まさにその期間に欧州議会議員をやってみないかというのだ。欧州議会は今でこそ権限が小さいが、もしリスボン条約[注1]が発効すれば、農業分野と漁業分野における政策決定には閣僚理事会の議決だけでなく欧州議会の議決も必要となる。ということは、漁業政策改革の決定に議員として直接関与できるということなのだ。それまでの私の願いは『沈黙の海』を英訳出版して、スウェーデン以外の国々でも乱獲に対する関心を呼び起こしたいということだったが、それと同時に議員にもなれば、ヨーロッパ全土で乱獲問題の議論に火をつけることができる。つまり、私の武器は一つじゃなくて、いきなり二つになるってことだ。それならば、申し出はなおさら断り切れないでしょ?

私はジャーナリストから政治家へと立場を180度、替えてしまったのだろうか? そうだとすれば、それはこの世で一番素晴らしい職業から足を洗ったということになる。だって、ジャーナリストという職業は、どんな物事でも自分から進んで分析したり考察したりできるし、時には鋭く、時には親身に、時には娯楽的に、時には批判的に、主観的に、客観的になったりというように様々なスタンスを持つことができるし、世論に影響を与えたり、社会の惨めな問題に光を当てたり、興味深い人に何人もインタビューしたり、権力を持つ者を厳しく追及したり、コラムを書いたり、言ってみれば何でもできる職業なのだ。でも、唯一の例外がある。それは、政治的な活動は行えないということ。でも、今まで私にはその気がなかったから、それは全く問題にならなかった。

でも、私のかつての同僚は、私がたまに民主主義のありがたさを実感して上機嫌になっていたのを覚えているだろう。例えば、イェルズィー・エインホーン(Jerzy Einhorn)[注2]マーリット・ポールセン(Marit Paulsen)[注3]といった人が政治の世界に突然足を踏み入れたときも、私は大喜びした。なぜなら、やる気と能力を持って何かに情熱を燃やしている人には、機会さえあれば、持てる力を生かして社会に貢献してほしい、と私は考えていたからだ。逆に、グスタフ・フリドリーン(Gustav Fridolin)[注4]オーサ・ドメイ(Åsa Domeij)[注5]が政治の世界から退いて、別の分野で活躍することを決めたときにも、私は同じくらいに共感した。そう、フリドリーンはジャーナリストになる決意をしたのだった。

民主主義はそうやって活性化されていく。つまり、政治から離れた世界で長いあいだ経験を積んだ人は、政治に必要とされる新しい視点を政治の世界に持ち込み、一方で、政治の世界で長いあいだ経験を積んだ人は一般社会に再び戻って政治経験を生かしていくべきなのだ。だから、私自身は立場を永久に替えてしまったとは思っていない。

私はまたとないこの機会に賭けてみようと思う。そして、すべてがうまく行ったあかつきには、20年以上にわたってスウェーデンのジャーナリスト協会に所属し、ヨーロッパ政治のなかで明らかに狂っているこの漁業問題を改める強い意志を持ち、その問題を描き伝える数多くの経験を積んだ一人の議員が欧州議会に乗り込んでくることになる。

さらば、ジャーナリスト新聞! いつの日かまた会えるといいな。



[注1]
リスボン条約はEUの27加盟国すべての批准を受けて、2009年12月より発効。

[注2]
イェルズィー・エインホーン(Jerzy Einhorn)
1925年生まれ、2000年死去。ポーランド系ユダヤ人として生まれ、1943年にナチスの強制収用所に入れられるが九死に一生を得る(その時の体験はChosen to liveにまとめられている)。大戦後に医者としてスウェーデンへ移住。1991年から94年まで国会議員(キリスト教民主党)として医療改革に携わる。ノーベル医学賞の選考委員も務める。

[注3]
マーリット・ポールセン(Marit Paulsen)
1939年生まれ、女性。ノルウェーに生まれ、若いときにスウェーデンへ移住。工場労働者として働いたり、小説を書いたりしながら、環境問題や動物虐待に関する啓蒙活動も行う。1999年から2004年まで欧州議会議員(自由党)を務める。2009年の欧州議会選挙に先駆けて、政治への復帰を表明し、当選を果たした。

[注4]
グスタフ・フリドリーン(Gustav Fridolin)
1983年生まれ、男性。環境問題に関心を持ち11歳で環境党に入党。同党の青年部会の代表として活躍し、2002年の議会選挙では19歳で当選。スウェーデンで最年少の国会議員が誕生することになった。議員は一般社会との接点を持たなければならず、議員職が生涯の職であってはならない、という考えから2006年の総選挙には出馬せず、その後、ジャーナリストに転身して、民放TV局でドキュメンタリー番組の作成に携わる。

[注5]
オーサ・ドメイ(Åsa Domeij)
1962年生まれ、女性、農業専門家。環境党に所属し、国会議員を2006年まで務め、現在は大手スーパーマーケットAxfood(Hemköpを経営)の環境部長を務める。

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by silent-ocean | 2010-01-14 07:17

11月30日発売 『沈黙の海』

<内容紹介・その1>
スウェーデン西海岸には、数世紀にわたって小規模な沿岸漁業で生計を立ててきた漁村があった。そこでは、「海が許容する以上の魚は獲らない」というのが漁民たちのルールだった。

しかし、1980年代に入ると他の漁港から大型の漁船が次々とやってきて、この漁港の沖合いで操業を始めた。最初はなす術もなく眺めていた地元の漁民も、負けじと海に繰り出し、夜も週末も関係なく漁を行うようになった……。

かつては「海の魚は尽きることがない」と考えられていた時代もあったが、1950年代に先進国が漁業を産業的に大規模に行うようになって以来、世界中の海で魚の枯渇が懸念されるようになってきた。

スウェーデンなどヨーロッパ諸国の行政機関も、漁の規制と漁船数の削減が必要だと認識するようになったが、彼らの行った政策は逆に乱獲を助長することになった。沿岸漁業を営んできた小型漁船を次々とスクラップにしていく一方で、大型漁船のさらなる近代化が推し進められている。また、がんじがらめ規制のために、スウェーデン近海だけでも毎年数千トンにおよぶ魚が陸揚げできず、海やゴミ処分場にそのまま投棄されている。

問題はヨーロッパだけに留まらない。新たな漁場を求めるヨーロッパの漁船のために、EUはアフリカなど途上国近海の漁業権を買い取り、そこで新たな乱獲が行われている。そのために生活の糧を失った地元の漁民が経済難民や海賊となることで、新たな問題が生まれている。

本書は女性ジャーナリストである著者が3年がかりでまとめたもので、スウェーデンで刊行されるやいなやベストセラーとなり、人々に衝撃を与えた。その内容は、漁業大国日本の漁業や私たちの食に対しても、大きな示唆を与えるものである。


<内容紹介・その2>
著者がこの本の中で議論しようとしているのは、本当はバルト海のタラではない。クロマグロでもウナギでも、イルカでもない。

個別の種が絶滅し、姿を消すことが問題なのではない。本当の問題は、私たちの海に生息する魚を獲り尽くすことによって、海の生態系全体が変化してしまうことなのだ。一つの種が姿を消すと、それは全体のバランスを狂わすことになる。そして、いずれは陸上の環境にも影響を与えかねない。

漁業による魚の乱獲を巡っては、めったに議論されない別の視点もある。魚は誰のものなのか?私たちすべてのものである共有資源が、多額の公的助成金を受けた少数の漁師によって獲り尽されようとしている現状は、果たして正しいことなのだろうか?EUが私たちの税金を使って発展途上国の漁業権を買い取り、ヨーロッパの漁船が途上国の海を空っぽにしている現状は、果たしてよいのだろうか?

著者イサベラ・ロヴィーンは、まずスウェーデン近海における水産資源の乱獲の調査から始め、次第にノルウェー北部の養殖場や、ブリュッセルにおけるEU政治の裏舞台、そしてアフリカ西部の島国カーボヴェルデへと調査を拡大していく。

『沈黙の海』は、世界中の海の海面下で何が起きつつあるのかを明確に示した貴重な本である。今すぐにでも皆さんがお読みになることをお勧めしたい。


<本文より抜粋>
私が漁業について本格的に関心を持ち始めたのは、ウナギに関する情報を読んでからであった。2003年10月のある日、スウェーデン水産庁からの記者発表がたまたま職場の机の上に置かれていた。私は一度目を通すと、その文章に釘付けになってしまい、何度も何度も読み返した。そして最後には、私の読み間違いではないことが明らかになった。

そこに書かれた事実はあまりに明白だった。水産庁が伝えるところによれば、サルガッソ海からヨーロッパへ流れてくるシラスウナギ(ウナギの稚魚)の量がここ20年あまりの間に99パーセント減少したという。

そして、さらに驚くべきことがその続きに書かれていた。水産庁としてウナギ漁の禁止を発令するほどの正当な理由は見当たらない、というのである。その理由はというと、そうすればスウェーデンの漁師に大きな打撃を与えることになるから、というのが水産庁の見解であった。

では、緊急措置として何を行うのだろうか。
いや、何もしない、というのである。


<本書の目次>
第1章 ウナギ
第2章 警告
第3章 鳴らされない警鐘
第4章 共有地の悲劇
第5章 ヨーテボリの漁船がやって来るまでは…
第6章 漁業に対する経済的支援
第7章 EUと途上国との漁業協定
第8章 EUの共通漁業政策と乱獲の義務
第9章 魚の養殖-果たして最善の解決策か?
第10章 解決の糸口


<著者の紹介>
Isabella Lövin(イサベラ・ロヴィーン)
1963年生まれ。ジャーナリスト。ストックホルム在住。消費者問題や食・環境の問題を扱う雑誌のレポーターやコラムニストのほか、公共ラジオで社会問題を扱う番組の編集長を務めてきた。本書が評価されて、2007年にスウェーデン・ジャーナリスト大賞や環境ジャーナリスト賞などを受賞。2009年夏より欧州議会議員。

<訳者の紹介>
佐藤 吉宗 (サトウ ヨシヒロ)       
1978年生まれ。京都大学経済学部卒業。在学中であった2000年にスウェーデンへ交換留学をしたことが契機となり、同国のヨンショーピン大学経済学部へ進学し修士号を取得。その後、同大学での勤務や欧州安全保障協力機構(OSCE)クロアチア支部での研修を経て、現在はスウェーデン・ヨーテボリ大学経済学部の博士課程に在籍。専門はマクロ経済、投資・生産性分析。通訳や翻訳のほか、スウェーデンの経済・政治・社会問題に関する記事を日本の雑誌に寄稿している

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by silent-ocean | 2009-11-30 09:56